「退職給付金」サポートの闇|傷病手当金と失業保険で“最大数百万円”の中身と、本人が負うリスク

退職給付金サポートの闇 傷病手当金・休職

「退職給付金、最大数百万円」「知らないと損をする国の制度」。SNSや動画広告で、こうした言葉を見かけることが増えました。申し込むと、WEB面談で受給の「サポート」契約を勧められます。

先に結論を書きます。「退職給付金」という名前の制度はありません。中身は、雇用保険の基本手当(失業保険)や健康保険の傷病手当金など、条件を満たす人が自分で申請できる公的な給付です。そして、事実と違う内容で申請した場合、責任を問われるのは申請した本人です。

この記事では、国民生活センター、厚生労働省、ハローワークの発表にもとづいて、何が問題になっているのかを整理します。

相談は4年で5倍に増えている

国民生活センターは2025年12月3日、「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポート」について注意喚起を出しました。全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は、次のとおりです。

年度相談件数
2021年度42件
2022年度54件
2023年度113件
2024年度217件
2025年度216件(10月31日までの登録分。前年度の同じ時期は90件)

相談の内容として目立つのは、次の3つです。

  • 申請サポートを依頼すれば受給額が増えると期待したが、実際には増えなかった
  • 途中で解約を希望したが、事業者が認めなかったり、違約金を請求された
  • うつ病などのメンタルの不調はないにもかかわらず、指定のクリニックで受診するよう指示されるなど、不正受給を促すかのような誘導をされた

相談事例には、「うつ病と診断されるためのマニュアルが送られてきた。詐欺にならないか不安」というものも含まれています。

「退職給付金」という制度はない

労働局は、「退職給付金という名前の制度はありません」と明記しています。広告でこの言葉が指しているのは、主に次の給付です。

給付制度内容
基本手当(失業保険)雇用保険就職する意思と能力があるのに職業に就けない期間に支給される。所定給付日数は、年齢、被保険者であった期間、離職理由によって90日から360日
傷病手当金健康保険業務外の病気やけがの療養のために仕事に就けない期間に支給される。支給開始日から通算して1年6か月

どちらも、給付額や日数は法律で決まっています。消費生活センターの注意喚起も、雇用保険の制度に「裏技」や「特別なノウハウ」は存在しないとしています。

「最大数百万円」という数字はどこから来るのか

2つの制度の上限をつなげると、期間は長くなります。

  • 傷病手当金は、支給開始日から通算して1年6か月まで支給されます。条件を満たせば、退職後も引き続き受けられます
  • その間、基本手当は受けられませんが、病気やけがで引き続き30日以上働けないときは、受給期間を最長3年間延長できます
  • 働ける状態になったあと、基本手当を受けます

ただし、これは実際に病気やけがで働けない人のための仕組みです。傷病手当金は、療養のために仕事に就けないことが条件であり、その判定は医師の意見などをもとに行われます。

基本手当の日数は、離職理由で決まる

区分主な対象所定給付日数
一般の離職者(正当な理由のある自己都合を含む)自己都合退職、定年など90日から150日
特定受給資格者など倒産、解雇、一定時間を超える時間外労働、嫌がらせなどによる離職90日から330日(年齢と被保険者であった期間による)
就職困難者障害のある方など150日から360日

病気を理由とする離職は、正当な理由のある自己都合(特定理由離職者)に当たり、給付制限はかかりませんが、所定給付日数は一般の離職者と同じ表が適用されます。日数が多くなるのは、特定受給資格者や就職困難者に当たる場合です。

どの区分に当たるかは、ハローワークが事実を確認して判断します。本人や事業者が選べるものではありません。

本当に働けない人が使うのは、正当な権利

実際に病気で働けなくなった人が、傷病手当金を受け、回復してから基本手当を受けることは、制度が想定している使い方です。その手続きは、自分でできます。

  • 傷病手当金は、申請書を加入している協会けんぽの支部(または健康保険組合)に提出します
  • 基本手当と受給期間の延長は、住所を管轄するハローワークで手続きします。延長の申請は、代理人や郵送でもできます

国民生活センターは、契約前に、サービス内容が支払う金額に見合っているか、解約条件はどうなっているかを慎重に確認するよう呼びかけています。

どこからが「不正受給」になるのか

厚生労働省とハローワークは、「実際にあったケース」として、次の流れをリーフレットで紹介しています。

  1. 「プロにお任せ」「最大〇〇万円受け取れる」という事業者に申し込む
  2. 「うつ病で離職して、今は症状は治まっている、ということにしましょう」と言われ、病院を紹介される
  3. 受け答えのマニュアルが送られ、指示どおりにオンライン診療を受ける
  4. 後日、調査で診断書に関する申告が虚偽であったことが確認され、数百万円の納付命令を受ける

リーフレットは、うその症状を医師に伝えて診断書を発行し、その内容にもとづいて失業等給付に関する申告を行った場合は不正受給になる、と明記しています。

不正受給になった場合に本人が負うもの

  • 不正行為があった日以降、失業等給付が一切支給されなくなる
  • 不正に受給した額の返還を命じられる
  • さらに、不正に受給した額の2倍に相当する額以下の納付を命じられる(いわゆる「3倍返し」)
  • 悪質な場合は、詐欺罪などで告発され、処罰されることがある

国民生活センターは、事実ではない内容で申請すると不正受給となり、申請者本人が責任を問われるとして、事業者から勧められても絶対に応じないよう呼びかけています。

資格のない事業者は、申請を代行できない

消費生活センターの注意喚起は、社会保険労務士などの資格のない事業者は、申請書類の作成や提出を代行することはできない、としています。申請は本人が行うことになり、申告した内容の責任も本人に残ります。

見分けるためのチェックリスト

公的機関の注意喚起をもとにすると、次のような勧誘には注意が必要です。

  • 「退職給付金」という制度があるかのように説明する
  • 「最大〇百万円」「受給額が2倍になる裏ワザ」など、金額や増額を強調する
  • 体調に問題がないのに、受診を指示する。受診するクリニックを指定する
  • 医師への受け答えのマニュアルを渡す
  • 事実と違う内容での申請を勧める
  • 解約の条件や違約金の説明がはっきりしない

実際に体調が悪い方へ

  1. 医療機関を自分で選んで受診し、症状をありのままに伝える
  2. 加入している健康保険に、傷病手当金の条件を確認する(傷病手当金は退職後ももらえるか)
  3. 退職後、働けない状態が30日以上続く場合は、ハローワークで受給期間の延長を申請する(傷病手当金と失業保険はどちらが先か)
  4. 働ける状態になったら、ハローワークで求職の申し込みをする

すでに契約してしまった方へ

  • 契約に関して不安がある場合や、トラブルが生じた場合は、消費者ホットライン「188」に相談してください。最寄りの消費生活センターにつながります
  • 失業保険の手続きについては、住所を管轄するハローワークに相談してください
  • 事実と違う内容での申請を勧められても、応じないでください

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出典

この記事は、上記の公的機関の情報(2026年10月9日確認)にもとづいて、制度の一般的な内容を説明するものです。個別の取り扱いは、ハローワーク、市区町村、加入している健康保険の窓口で確認してください。

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